エステ業界の市場規模とは？業界の動向を解説！
エステティック業界は、美容意識の高まりとともに成長を続けてきましたが、近年は複雑な状況を迎えています。2024年度のエステティックサロン市場規模は3,043億円となり、5年連続のマイナス推移となる見込みです。
本記事では、最新の統計データを基にエステ業界の市場規模の現状を分析し、今後の展望と課題について詳しく解説します。エステサロンの経営者や業界関係者の皆様が、現在の市場環境を正しく理解し、適切な経営戦略を立てる際の参考資料としてご活用ください。
目次
エステ業界の市場規模は？
エステ業界の市場規模の現状に目を向けることは、エステ業界でビジネスをする上で欠かせません。ここでは、エステ業界の市場規模について詳しく解説します。
全体市場規模の推移と現状
矢野経済研究所が2025年4月に発表した調査によると、2024年度のエステティックサロン国内市場規模は前年度比98.3％の3,043億円となる見込みです。これは5年連続のマイナス推移となり、業界全体が厳しい状況に直面していることを示しています。
2019年には4,000億円を超えていた市場規模は、コロナ禍を経て縮小傾向が続いており、業界全体での構造的な変化が求められています。一方で、2025年度の市場予測では前年度比100.1％の3,046億円と、わずかながら回復の兆しも見えています。
分野別市場動向の詳細分析
エステティックサロン市場を分野別に見ると、以下のような特徴が明らかになっています。
レディース施術市場は1,918億円（前年度比97.4％）となり、市場全体の約6割を占める主力分野でありながら減少傾向にあります。特に脱毛分野では、大手チェーンの経営破綻や突然のサロン閉鎖、返金トラブルなどが相次ぎ、消費者の信頼回復が重要な課題となっています。
メンズエステ市場は155億円（同100.6％）と、微増ながら成長を維持しています。男性の美容意識向上により、特にひげ脱毛や痩身メニューの需要が高まっており、今後の成長が期待される分野です。
物販・その他サービス市場については970億円（同99.9％）となり、ほぼ横ばいの状況が続いています。
エステ業界が直面している課題
エステ業界には現在、様々な課題があります。ここでは、エステ業界が直面している課題について詳しく解説します。
脱毛サロン市場への大きな影響
近年のエステ業界におい深刻な問題の1つが、脱毛サロンの経営破綻による市場への悪影響です。2024年もリージョナルチェーンや中堅規模の企業の破綻が続き、業界全体の信頼性に大きな打撃を与えています。
これらの問題により、消費者の脱毛サロンに対する信頼が低下し、テレビCMや屋外広告の出稿が減少するなど、業界全体のプロモーション活動にも影響が生じています。経営体力のある企業を中心にネット広告の出稿は続いているものの、ネガティブな報道の影響は当面続くでしょう。
ハイフ（HIFU）施術の規制強化
2024年6月に厚生労働省が発表したガイドラインにより、医師免許を有していない者によるハイフ（HIFU）機器を使用した施術が全面的に禁止されました。これにより、多くのエステサロンでメニューの見直しが必要となっています。
ハイフは「高密度焦点式超音波」を意味し、皮下組織やSMAS筋膜に超音波を集中させて肌のたるみを改善する技術として人気を集めていましたが、健康被害の報告により規制が強化されました。この規制により、エステサロンから美容医療への顧客流出も懸念されています。
店舗数増加による競争激化
エステ業界は特別な資格が不要で新規参入しやすいことから、大小さまざまなサロンが継続的に開業しています。しかし、新規開業したエステサロンが3年以内に閉業する割合は9割以上とも言われており、激しい競争環境が浮き彫りになっています。
この状況により価格競争が激化し、無理な価格設定でサロンの利益率が上がらず、経営が苦しくなるという負の連鎖が生じています。
成長が期待されるメンズエステ市場
エステ業界では悪いニュースも目立ちますが、一方で成長が期待されている市場もあります。ここでは、成長が期待されているメンズエステ市場について解説します。
男性の美容意識向上による市場拡大
エステ業界全体が縮小傾向にある中で、メンズエステ市場は着実な成長を続けています。男性の美容意識向上により、以下のようなサービスが特に人気を集めています。
- ひげ脱毛（毎朝の準備時間短縮、清潔感向上）
- 痩身・ボディケア（健康志向の高まり）
- フェイシャルケア（スキンケア意識の浸透）
メンズエステは比較的低価格で始められるメニューが多く、初めての利用でも抵抗感が少ないことも成長要因の1つです。
メンズ市場における課題と注意点
成長著しいメンズエステ市場ですが、一方でトラブルも増加しています。独立行政法人国民生活センターによると、18歳・19歳の消費者生活相談で「脱毛エステ」が2年連続1位となっており、男性向けサービスでも注意が必要です。
特に、SNS広告で低価格をうたいながら高額プランを勧誘するケースや、学生に対する過度な契約などが問題となっており、業界全体での健全化が求められています。
エステ業界の将来の展望
先述の通り、2025年度のエステティックサロン市場規模は前年度比100.1％の3,046億円になると予測されており、わずかながら回復の兆しが見えています。今後の市場動向を左右する主な要因は以下の通りです。
- メンズエステ市場の継続的な成長
- 美容意識の高まりによる潜在需要の拡大
- 技術革新による新しいサービスの提供
一方で以下の要因によって、状況が改善しない可能性もあります。
- 脱毛サロン問題の長期化
- 競争激化による価格下落圧力
- 人材不足による運営効率の悪化
エステサロン経営を成功させるためのポイント
激しい競争環境の中で成功するためには、単純な価格競争ではなく、独自の技術やサービスによる差別化が不可欠です。特定の分野に特化したメニュー開発や、高度な技術習得による付加価値の創出が求められます。
また、口コミやリピート率の向上により、安定的な顧客基盤を構築することが重要です。丁寧なカウンセリングや アフターフォローにより、長期的な顧客関係を築きましょう。
そして景品表示法、薬機法、医師法、特定商取引法などの関連法規を遵守し、透明性の高い経営を心がけることで、顧客からの信頼を獲得できます。
エステ業界に関するよくある質問
エステ業界に関してよくある質問に回答します。
Q. エステ業界の市場規模が縮小している主な原因は何ですか？
主な原因として、脱毛サロンの経営破綻による業界全体への信頼低下、店舗数増加による競争激化、ハイフ施術の規制強化による美容医療への顧客流出などが挙げられます。
Q. メンズエステ市場の成長が続く理由は何ですか？
男性の美容意識向上、ひげ脱毛などの実用的なニーズの高まり、比較的低価格で始められるメニューの充実、女性向けサービスの問題の影響を受けにくいことなどが主な理由です。
Q. 今後エステサロンが生き残るために必要なことは？
専門性の確立による差別化、顧客満足度の向上、コンプライアンスの徹底、メンズ市場への参入検討、適切な価格設定による持続可能な経営が重要です。
Q. エステ業界の将来性はどう考えればよいですか？
全体市場は縮小傾向にありますが、メンズ市場の成長や美容意識の高まりなど成長要因もあります。適切な戦略により成長の可能性は十分にあると考えられます。
エステ業界は回復の兆しを見せ始めている
エステ業界の市場規模は2024年度3,043億円と5年連続のマイナス推移となっていますが、メンズエステ市場の成長や美容意識の継続的な高まりにより、2025年度にはわずかながら回復の兆しが見えています。
業界全体が直面する課題は決して小さくありませんが、専門性の確立、顧客満足度の向上、コンプライアンスの徹底により、競争の激しい環境でも成功することは可能です。特に成長が期待されるメンズ市場への参入や、技術革新による新たなサービス提供など、変化に対応した戦略的な取り組みが求められています。
エステサロンの経営者の皆様には、これらの市場データを参考に、持続可能で顧客に愛される事業運営を心がけていただければと思います。
